公開日時:2019年2月18日 最終更新日:2020/04/09
界面活性剤とは?種類や特徴について
》赤ちゃんのお肌への負担を考慮しアミノ酸系やベタイン系の界面活性剤を配合したベビーソープはこちら
界面活性剤(かいめんかっせいざい)という言葉をご存知でしょうか?
美容や清掃、食品関係のお仕事をされている方であれば、頻繁に出てくる言葉ではありますが、そうでなければ知らない方がほとんどだと思います。
なんとなく界面活性剤に悪いイメージを持ち、界面活性剤の使用そのものを否定される方もいらっしゃいますが、界面活性剤そのものに良いも悪いもありません。
界面活性剤についてや、界面活性剤がベビーソープやシャンプーの品質を左右するのは本当か等、詳しく解説します。
界面活性剤とは?
界面活性剤というのは、分子内に親水基(しんすいき)と疎水基(そすいき)の両方を持つ成分のことを言います。
親水基というのは水になじみやすいということであり、油になじみにくい為、疎油基(そゆき)とも呼ばれます。
疎水基というのは水とはなじまないことを表し、油となじみやすいため親油基(しんゆき)とも呼ばれます。
水と油はそのままでは決して混ざり合うことはありませんが、水となじみやすい親水基と油となじみやすい親油基の両方を持つ界面活性剤と一緒に混ぜることで水と油を混ぜることが可能になります。
界面という言葉自体馴染みがあまりないかと思いますが、界面というのは性質の違う2つの物質の接する境を意味します。
活性とは化学反応を起こしやすい状態を表すため、界面活性剤は物質の境界面で化学反応を起こさせる成分といった意味となります。
この特殊な構造をした界面活性剤は様々な分野で用いられています。
様々な分野で用いられる界面活性剤
界面活性剤は美容業界、清掃業界、食品業界など幅広い業界にて活用されています。
美容業界だと、みなさんが毎日のように使用されるシャンプー、トリートメント、ボディソープ、洗顔料、クレンジング、赤ちゃん用のベビーソープやベビーシャンプーはもちろんですが、多くの乳液・クリーム・美容液などにも使用されています。
清掃業界では洗剤に界面活性剤が使用されています。
食品業界にも使われているの?と不思議に思われるかもしれませんが、マヨネーズやマーガリン、バター、アイスクリームなどに界面活性剤が使用されています。
もちろん、美容業界と食品業界などで使用される界面活性剤の種類は異なってきますが、界面活性剤のもつ界面活性作用は様々な用途に応用されています。
界面活性剤の主な作用
界面活性剤は様々な分野で用いられていますが、それは界面活性剤が下記で紹介する5つの作用を持っているからです。
洗浄
シャンプーやボディソープなど洗浄系化粧品に界面活性剤が用いられる一番の理由は洗浄作用があるからです。
皮膚には皮脂という油分が油汚れとなって溜まっています。
そのため、単に水だけで洗い流しても油分である皮脂は水を弾いてしまうため、洗い流すことができません。
そこで界面活性剤を使用することで、界面活性剤の親油基が皮脂汚れに吸着し、親水基が水に溶け込むため皮脂汚れを皮膚から剥がすことが可能になります。
これが界面活性剤の洗浄作用です。
乳化
乳化作用は化粧品だと乳液やクリーム等、食品業界ならマヨネーズやマーガリン等に応用されています。
化粧品のベースは水であることが多く、全成分を確認すると水以外にホホバオイルとか馬油といった油分が配合されていることがあります。
それでも特に分離せずにちゃんと混ざっているのは乳化作用によるものです。
コップの中に水を入れて上から油を流し込んでも水の層の上に油の層ができるだけで混ざり合うことはありませんが、そこに界面活性剤を流し込むことで均一に混ぜることができます。
また、マヨネーズを作る際には卵と油と酢が用いられますが、分離せずに混ざり合っているのは、卵に含まれる卵黄レシチンという界面活性剤によって乳化されているからです。
これが界面活性剤の乳化作用です。
分散
例えば、コップの中に水を入れて、その上にススの粉をばら撒いても水の表面にススが浮かぶだけです。
水の表面張力とスス表面を覆う空気の膜によってこのような状態になります。
そこに界面活性剤を流し込むとススの粒子の周りを界面活性剤が取り囲み、水の中にススを分散させることができます。
これが界面活性剤の分散作用です。
起泡
シャンプーやボディソープを使うとなぜ泡立つのでしょうか?
シャンプー等が泡立つのは界面活性剤の気泡作用によるものです。
シャボン玉も界面活性剤の起泡作用が用いられています。
水に界面活性剤を混ぜると水の表面張力が低下し、膜ができやすくなります。
また膜は破れにくいため、掻きまわしたり、混ぜたりすることで膜の中に空気が閉じ込められ泡となります。
これが界面活性剤の起泡作用です。
浸透
例えば、衣類の上に水をこぼした際に衣類の上で水が丸まり染み込むことなく留まっている状態を目にしたことがあると思います。
これは水の表面張力によってもたらされますが、界面活性剤を水に混ぜると水の表面張力が低下し、衣類に染み込んでいきます。
これが界面活性剤の浸透作用です。
界面活性剤の種類
界面活性剤には水に溶けた際にイオンになる種類とならない種類があり、4つにわけることができます。
種類によって特徴が異なり、用いられ方も変わってきます。
陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)
水に溶けた際に疎水基部分がマイナスイオンに電離する界面活性剤を陰イオン界面活性剤やアニオン界面活性剤と言います。
起泡性や乳化・分散に優れ、温度の影響を受けにくいという特徴があり、多用途に使用されています。
石鹸やオレフィン(C14-C16)スルホン酸Na、ラウリル硫酸Na、ラウロイルアスパラギン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa、ココイルメチルタウリンNa、ラウレス-4カルボン酸Naといった成分が該当します。
シャンプーやボディソープ、洗濯洗剤などによく使用されています。
陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)
水に溶けた際に疎水部分がプラスイオンに電離する界面活性剤を陽イオン界面活性剤やカチオン界面活性剤と言います。
吸着性や殺菌効果、帯電防止といった特徴があります。
ポリクオタニウム-10やステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアミンといった成分が該当します。
吸着性があるため、トリートメントや柔軟剤などに使用されます。
両性界面活性剤
水に溶けた際に酸性域ではカチオン、アルカリ性域ではアニオンの性質を示す界面活性剤を両性界面活性剤と言います。
肌に対してやさしく、他の界面活性剤と相性が良く効果を高めます。
ラウリルベタインやラウリルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸Naといった成分が該当します。
低刺激系のシャンプーやボディソープ、赤ちゃん用のベビーソープやベビーシャンプーによく使用されています。
非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)
水に溶けた際にイオン性を示さない界面活性剤を非イオン界面活性剤やノニオン界面活性剤と言います。
泡立ちは少なめ、可溶化や乳化に優れ、温度の影響を受けやすいという特徴があります。
デシルグルコシドやコカミドDEA、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート20、コカミドMEAといった成分が該当します。
洗剤やシャンプーだけでなく、食品に用いられる成分もあります。
○○系といった界面活性剤の分け方
アミノ酸系界面活性剤や硫酸系界面活性剤といった呼び方をご存知の方もいらっしゃると思います。
先ほどのイオン性質による分類よりもこちらの方が馴染みがあるかもしれません。
これらは界面活性剤を作る際に反応させた成分による特徴が構造式上に表れており、その特徴ごとに分類しているようです。
よく見かけるのは下記のような分類です。
アミノ酸系界面活性剤
成分名にアミノ酸名が入っている界面活性剤です。
ココイルグルタミン酸TEA、ココイルアラニンTEA、ラウロイルアスパラギン酸Na、ラウロイルサルコシンNa
上記のようにグルタミン酸やアラニン、アスパラギン酸、サルコシンといったアミノ酸名称が入っているのが特徴です。
アミノ酸系は低刺激な界面活性剤であるという認識が強いですが、全てのアミノ酸系界面活性剤がそうとは言い切れませんので注意が必要です。
硫酸系界面活性剤
成分名に硫酸が付いている界面活性剤です。
ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na
上記のように硫酸が付いています。
高い洗浄力が特徴です。
ベタイン系界面活性剤
成分名にベタインが付いている界面活性剤です。
コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ココアンホ酢酸Na
上記のようにベタインが付いています。ココアンホ酢酸Naはベタインと付いていませんが、ココアンホ酢酸Naの医薬部外品表記名は「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン」となり、ベタインが付いています。
眼や皮膚への刺激が小さいのが特徴です。
その他の○○系界面活性剤
上記以外にも成分名にグルコシドが付くグルコシド系界面活性剤、成分名にシルクやコラーゲンといった名称が入ったPPT(ポリペプチド)系界面活性剤、構造式上に高級アルコールの構造を持つ高級アルコール系界面活性剤、石油由来の石油系界面活性剤など様々なグループ分けがされています。
洗浄系化粧品の品質を界面活性剤が左右する?
洗浄系化粧品(シャンプーやボディソープ等)は水がベースとなっていることがほとんどですが、水の次に多く含まれるのが界面活性剤です。
配合量が多い分、界面活性剤の持つ特徴がそのまま洗浄系化粧品に影響として表れやすくなります。
石鹸の場合は単体で使用されることもありますが、石鹸以外の界面活性剤の場合は1つの洗浄系化粧品に複数の界面活性剤が使用されることが多いです。
化粧品の場合、配合率1%を超える成分は配合量の多い順に記載しなければならないというルールがあるため、複数配合される界面活性剤の中でも水の次に記載される界面活性剤が最も配合量の多い界面活性剤ということになります。
一番多く配合される界面活性剤をメインの界面活性剤と呼ぶことがあり、メインの界面活性剤の特徴が洗浄系化粧品自体の特徴として表れる可能性が高くなります。
メインの界面活性剤を補完する形でそれ以外の界面活性剤を選ばれることが多く、例えばメインの界面活性剤の泡立ちが少ない場合は、泡立ちを補完する界面活性剤が配合されるなど組み合わせによって洗浄系化粧品の洗浄力や泡立ち等のバランスを取っています。
このように、お肌や髪の洗浄を目的とする洗浄系化粧品の場合、配合量の多い界面活性剤は大きな影響を及ぼすため、シャンプーやボディソープ等を選ぶ際には配合されている界面活性剤成分をしっかりと確認することが大切です。
この記事を書いた人
古家後健太
<執筆者プロフィール>
化粧品成分検定1級合格(化粧品成分上級スペシャリスト)。ベビースキンケアと子育て情報の育児メディア『マンビーノ(mambino)』運営責任者。株式会社SANSHIN代表取締役。赤ちゃんのお肌の特徴を知れば、赤ちゃんこそスキンケアが必要なのがわかります。ですが実際はベビースキンケアの重要性は世間にあまり浸透していませんでした。赤ちゃんのお肌をトラブルから守るためには、しっかりと赤ちゃんのお肌に必要なケアを広める必要があると思い、2014年にオリジナルベビースキンケアブランド「Dolci Bolle(ドルチボーレ)」を立ち上げました。子供のお肌を守りたいというママやパパの想いに寄り添う化粧品をお届けします。
化粧品成分上級スペシャリスト認定書
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提供:株式会社SANSHIN