公開日時:2019年6月18日 最終更新日:2020/04/08
【医師監修】乳児脂漏性湿疹の症状・原因とご家庭でできる対策について
この記事の監修ドクター
清水なほみ医師
<監修者プロフィール>
2001年広島大学医学部医学科卒業
中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て、2010年9月「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本産科婦人科学会専門医/日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
所属学会:日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会
▼ポートサイド女性総合クリニック
http://www.vivalita.com/
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赤ちゃんの頭や顔にできる乳児脂漏性湿疹は多くの赤ちゃんが経験する乳児湿疹の一つです。
乳児脂漏性湿疹にはどのような特徴があり、なぜ赤ちゃんにできやすいのか原因を知ることが、適切な対策を行うために必要となります。
乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)とは何か?
乳児脂漏性湿疹は赤ちゃんにできやすい乳児湿疹の一種です。
乳児だけに限らず大人も脂漏性湿疹に悩まされることがあります。
脂漏性湿疹は脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)と呼ばれる場合もあります。
大人の場合も脂漏性皮膚炎が顔や脇の下などによく起こりますが、湿疹と皮膚炎は同義なので乳児脂漏性湿疹も脂漏性皮膚炎と同じことです。
大人と乳児で脂漏性湿疹ができる基本的な流れは同じですが、症状や原因に異なる点も見受けられます。
ここでは乳児脂漏性湿疹について見ていきます。
乳児脂漏性湿疹の症状
症状としては、お肌に白いフケのようなものができたり、ベタベタした黄色や茶色のうろこ状やかさぶた状のものができたり、赤みを帯びた隆起が肌に見られることもあります。
ベトついた黄色がかったうろこ状やかさぶた状のものを乳痂(にゅうか)と呼びます。
乳痂は「脂漏」とも呼ばれます。
乳児脂漏性湿疹の多くは痒みや痛みはありませんが、後述するマラセチア真菌が原因の場合は痒みが生じる場合があります。
できやすい時期
名称からわかる通り、乳児期にできやすくなっています。
特に乳児期の中でも生まれて間もない新生児期から生後3ヶ月頃の初期に起こりやすいです。
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症状が表れやすい部位
赤ちゃんの場合は主に頭や顔(おでこや眉・瞼・頬)、耳の周り(耳の上や後ろ)に症状が表れることが多いです。
顔や頭はパッと見ただけで気付きやすいですが、耳の裏側などは見落としがちなので、よく観察してあげましょう。
新生児ニキビとの違い
乳児脂漏性湿疹と同時期にできやすいのが新生児ニキビです。
どちらもお肌がベタベタした感じになるため、見分けが付きにくいですが、新生児ニキビがポツポツ・ブツブツとした湿疹ができるのに対し、乳児脂漏性湿疹はフケやカサブタのようなものが見られたり、赤くなった皮膚がある程度の範囲で隆起したりするといった違いがあります。
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アトピーとの見分け方は?
アトピー性皮膚炎も早ければ生後2~3ヶ月頃から発症するとも言われており、アトピーなのではないかと心配になられるママやパパも多いことでしょう。
アトピーの特徴は強い痒みと左右対称に症状が表れやすいこと、そして皮膚がカサカサな状態になることが挙げられます。
痒みが生じると赤ちゃんは自分で痒いとは言えませんが、掻こうとする仕草や顔や頭を布団や枕などに擦りつけようという行動が見られた場合はアトピーである可能性があります。
乳児脂漏性湿疹ではフケやかさぶた、隆起した赤みを帯びた肌、ベタベタと脂っぽい肌といった特徴が多くなるため、そういった特徴の違いを確認すると良いでしょう。
乳児脂漏性湿疹の原因
在胎週数(ざいたいしゅうすう)が原因
実は、乳児脂漏性湿疹がどのようなメカニズムで起こるのかについては未だ解明されていません。
ただ在胎週数の長短に相関して、乳児期の脂漏性湿疹の発症に有意差があることが報告されていることから、皮脂の分泌量・皮脂の成分が関与しているのではと考えられています。
生後3ヶ月頃までの発症が多い
生後3ヶ月頃までに乳児脂漏性湿疹の発症が多いことがわかっています。
理由としては生まれてくる前の胎児の頃にお母さんから受けていたホルモンの影響が残っており、生後3ヶ月頃までの赤ちゃんは皮脂分泌が多くなるためです。
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マラセチア真菌による影響
皮フの常在真菌であるマラセチアが原因とも考えられています。
マラセチア菌が皮脂の成分を分解することで、遊離脂肪酸を生成し、それらが皮フに刺激を与えることが発症のメカニズムとも考えられています。
母乳は原因になる?
乳児期、特に生後3ヶ月までの赤ちゃんの食事と言えば母乳かミルクです。
母乳は血液を元に作られることもあり、お母さんの食事内容が母乳に影響を与えます。
そのため、母乳が原因で乳児脂漏性湿疹になるのではないかと心配されるママもいらっしゃいますが、乳児脂漏性湿疹は過剰な皮脂分泌が原因と考えられており、皮脂分泌が過剰になる理由はお腹にいた頃のホルモンの影響によるものなので、母乳は関係ないと考えられます。
乳児脂漏性湿疹の対策
乳児脂漏性湿疹は過剰な皮脂が原因の一つである可能性が高いです。
しかし皮脂分泌の量を減らすことはできないので、余分な皮脂がたまらないように上手にコントロールすることで、少しでも負担を減らしてあげましょう。
乳児脂漏性湿疹の対策
生後3ヶ月くらいまでの期間の過剰な皮脂分泌そのものを止めることはできませんので、皮脂分泌そのものを抑えることを考えるのではなく、分泌された皮脂を肌の上で放置しないことが大切です。
そのために大事なことがお肌を清潔にするスキンケアです。
お肌を清潔にするスキンケア
皮脂が過剰に分泌されてそのまま放置することは乳児脂漏性湿疹へとつながりやすくなりますので、皮脂でベタベタしたお肌を拭いたり、洗ったりして清潔な状態にしてあげましょう。
肌がベタベタ・テカテカとオイリー状態であれば、ガーゼやコットンなどで擦らずにポンポンとやさしく押し当てるように拭き取ってあげましょう。
ただ、拭き取りだけで余分な皮脂を取り除くことは難しいため、1日1回は沐浴時にしっかりと余分な皮脂汚れを洗い流してスッキリ清潔な状態にリセットしてあげることが大切です。
顔や頭も洗浄料でしっかり洗う
新生児や生後3ヶ月前後の赤ちゃんの沐浴時は色々不安ですよね。首も据わっていないし、本当にか弱い存在なので、ベビーソープや石鹸などの洗浄料が目や口に入ることが心配で顔部分はぬるま湯で軽く洗い流すだけというママやパパも多いようです。
ですが、むしろ生後3ヶ月頃までの赤ちゃんは皮脂分泌が盛んなので、しっかりとベビーソープなどの洗浄料を使って洗ってあげないと余分な皮脂汚れが残ってしまい、乳児脂漏性湿疹の原因となってしまうこともあります。
しっかりとベビーソープなどを使って皮脂分泌の多い頭や顔部分を洗ってあげることが乳児脂漏性湿疹対策のポイントとなります。
皮脂汚れを落とすためといってゴシゴシとガーゼで擦るのはNGです。
泡タイプのベビーソープやしっかり泡立てた石鹸などを使用し、洗う際には擦らず泡で洗うことを意識すると良いでしょう。
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保湿ケアも忘れずに!
洗った後には忘れずに保湿ケアもしてあげましょう。
皮脂でベタベタなのに保湿しては逆効果なのでは?と思われるかもしれませんが、皮脂分泌が多い時期だからといって赤ちゃんの身体全身の皮脂分泌が多いわけではありませんし、皮脂はあくまでも油分であり、お肌には潤いも必要です。
赤ちゃんは皮脂分泌は多いのですが、皮膚が大人よりも薄く、角質層に抱え込む水分量も少ないため、乾燥しやすいお肌です。
そのため、お肌の潤いを補うための保湿ケアをしてあげましょう。
角質層の潤いと皮脂膜はお肌のバリア機能を担っていますので、角質層に潤いを補うことはバリア機能のサポートにつながります。
保湿ケアは全身が基本となります。
身体の部位によって皮脂分泌が多い少ないがありますので、油分が多めのベビークリームやベビーバーム、ベビーオイルよりは水分と油分をバランスよく補える乳液タイプのベビーローションがおすすめです。
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乳児脂漏性湿疹になってしまった場合の対策
どれだけ注意して気を付けていても乳児脂漏性湿疹になってしまうことはあります。
そのため、もし乳児脂漏性湿疹になってしまってもあまり気にし過ぎないようにしましょう。
乳児脂漏性湿疹になってしまった場合の対処について見ていきましょう。
多くの場合は時間が解決する
赤ちゃんの過剰な皮脂分泌はいつまでも続きません。
個人差はありますが、2~4ヶ月、平均で3ヶ月ほどで皮脂分泌が治まっていき、それに伴って乳児脂漏性湿疹の症状も治まっていくことがほとんどです。
基本的にはお肌の清潔を心がけることが大切です。
乳児脂漏性湿疹になると黄色いかさぶたやうろこ状のフケのような症状が表れます。
黄色いかさぶたは硬くなっている場合があり、無理に剥がそうとするとお肌を傷つけてしまう恐れがあります。
黄色いかさぶた部分には沐浴前にオリーブオイルやホホバオイル、ベビーオイルなどを馴染ませておくと沐浴の際に浮き上がり洗い流しやすくなります。
もしオイルなどで馴染ませても取れない場合も無理に剥がさずそのままにしておきましょう。
しっかりとベビーソープや石鹸を使って1日1回、皮脂汚れを洗い流すことを心がけましょう。
病院受診・医師に相談するタイミング
症状が長引いたり、悪化していく場合は、掛かりつけの皮膚科や小児科を受診する目安となります。
乳児脂漏性湿疹は過剰な皮脂に起因するものですが、明確なメカニズムが不明なため、赤ちゃんの状態をしっかり確認してあげましょう。
皮膚の赤くなっている部分は炎症を起こしているわけですが、炎症が悪化すると痛み等が生じる場合もありますので、自己診断するのではなく、気になったら掛かりつけ医に相談するというスタンスで良いと思います。
貰った塗り薬は正しく使う
医療機関を受診した際に処方された塗り薬などの薬はきちんと指示通りに使いましょう。
自己判断で薬の使用を中止したりすると、治りが遅くなったり、症状が長引く可能性があります。
もし薬を使って症状が治まらない、悪化したなど問題があれば、そのことを医師に伝えることが大切です。
まとめ
乳児脂漏性湿疹は過剰な皮脂によって起こりやすい乳児に起こる湿疹の一種です。
生後まもない赤ちゃんのお肌は皮脂分泌が多くなりますので、皮脂汚れを放置せずしっかりと洗ったり、拭いたりと清潔でいられるよう心掛けてあげましょう。
乳児脂漏性湿疹は顔や頭の広範囲に症状が出ることもあり、見た目的には痒いんじゃないかと心配になられるかもしれませんが、多くの場合は痒みや痛みはないため、過剰に心配する必要はありません。
生後3ヶ月以降になれば次第に症状が落ち着いていくことがほとんどですので、その期間はしっかりと過剰な皮脂をそのままにしないようにスキンケアで対策してあげましょう。
不安な場合は掛かりつけ医を受診することも大切なことです。
乳児脂漏性湿疹以外の症状である可能性もありますので、自己診断に頼らず、気になったら医療機関への受診をおすすめします。
この記事を書いた人
古家後健太
<執筆者プロフィール>
化粧品成分検定1級合格(化粧品成分上級スペシャリスト)。ベビースキンケアと子育て情報の育児メディア『マンビーノ(mambino)』運営責任者。株式会社SANSHIN代表取締役。赤ちゃんのお肌の特徴を知れば、赤ちゃんこそスキンケアが必要なのがわかります。ですが実際はベビースキンケアの重要性は世間にあまり浸透していませんでした。赤ちゃんのお肌をトラブルから守るためには、しっかりと赤ちゃんのお肌に必要なケアを広める必要があると思い、2014年にオリジナルベビースキンケアブランド「Dolci Bolle(ドルチボーレ)」を立ち上げました。子供のお肌を守りたいというママやパパの想いに寄り添う化粧品をお届けします。
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提供:株式会社SANSHIN